2015年07月31日
Vol.52 和食「旬喰い 右近」
五感で“旬”を感じる和懐石の世界
四季の愛おしさをじっくり味わう
「右近に行けば、次の季節がそろそろ来ているなってわかるんです」とは客の談。店主・右近健太さんの一日は情報収集から始まる。仕入れ先に出向いたら、新しい食材はないかとしつこいぐらいに聞く。和懐石で大切にされるのは「走り」「旬」「名残」。旬の出始めの早さといえば、佐賀一二を争う存在だという。
嘉瀬町出身。将来の道が定まらず、バーでのバイト時代「何か料理を出してみたいな」と思ったのがきっかけ。25歳のちょっとした好奇心は、バイトが終わった早朝、魚屋に無給で弟子入りするまでに膨らんだ。その彼を見初めたのが、佐賀を代表する和懐石店のオーナーだ。「初めて懐石料理を食べた時、世の中にこんな料理があるんだ…と感動しましたね」。オーナーのもとで5年間修業後、独立。今年の8月で3周年を迎える店には、侘び寂びを味わう喜びを知る、常連客が集う。
今年の春からコース料理1本に絞った。メニュー表もない上レシピもない。毎日食材を仕入れながら、同時に右近さんの頭の中ではその日のレシピが組み立てられていく。4,000円のコースでは先付、小鉢、お造りと続いた後に「お凌ぎ」として、寿司が一貫付くのが右近流だ。そして焼き物、煮物、揚げ物と続き、ごはん、締めの水菓子まで全9品。
「ああ美味しかった…それだけではなく、五感で季節を感じ、そのひと時を楽しむ特別な“何か”を提案したい」と右近さん。例えば夏のコースだと、先付の器にマクワウリを使ったり、焼き魚にはキュウリの皮の部分を活かしたおろしを乗せたり、と右近さんならではの美的センスが光り、丁寧な仕事を経た一皿一皿は繊細でありながら力強い。料理との出会いは一期一会。食べることへの感謝と移りゆく四季の愛おしさを感じさせてくれる。
DATA
■住所 佐賀市駅前中央1-2-28 MAP
■TEL 0952-28-2144 ※予約制
■営業時間 18:00~22:30(月~木曜)、18:00~23:00(金・土曜)
■店休日 日曜
■席 26席
■カード使用 不可
■駐車場 なし
■喫煙 可(※カウンターのみ禁煙)
「あぶり家 壱町(いっちょう)」Vol.119
「蛮屋~BANYA~」Vol.118
「季節料理 魚喜」Vol.117
「料庵 川松」Vol.114
「農家屋台 いい・麺亭」Vol.113